家を建ててからやっぱり必要なかった、という設備はよくあるものです。
設備というのは建てたときのコストだけではなく、維持していくためのランニングコストにもかかります。形あるものは何もしないで放置すると傷んできてどこかしらに支障をきたします。
つまり、設備を増やすということは今後それを維持するコストも支払っていく決断をするということです。そんな設備が家を建てたあとに複数見つかったとしたら、後悔しそうですよね。
今回は輸入住宅に限らず、(特に輸入住宅では)設置するかよく検討したい設備の中からベランダをご紹介します。
(ここでの「ベランダ」は「バルコニー」を含めます)
目次
ベランダのメリット
べランダと言えば日本のほとんどの家に設置されている設備だと思います。
そんなベランダのメリットはやはり、開放感ではないでしょうか。
この開放感にはいくつかの意味を含みますが、まずは文字通り外の空間であることです。
自分の敷地内でありながら使える外の空間を好むのは、伝統的な日本家屋の「外」と「中」が自然につながった空間設計に由縁を求めることができるかもしれません。
また、洗濯物など湿ったものをベランダに干せば文字通り外の空間ですから部屋干し独特の匂いを気にしなくてよくなります。観葉植物を置くスペースとして活用したり、たばこを一服する場所になっている人もいるでしょう。
そのほかにも、洗濯物をたたむときのお日様の匂いが好き!という方もいるかと思います。これは日光があたるベランダならではのメリットですね。
ベランダのデメリット
ベランダを設置するデメリットは複数あります。
日本ではベランダがない家がほとんどないので、ベランダをつけないという発想がない方もいるかもしれません。でも本当にベランダが必要でしょうか?改めて考えてみてください。
東京ではおよそ3日に1日は雨が降るという事実
気象庁のデータによると2021~2023年の3年間に東京都(世田谷)で雨が降った日は合計334日*とのことで、平均すると年間約111日は雨が降っていたことになります。
今日は雨が降るかもしれません、と天気予報が言っていれば、ほとんどの人はベランダで洗濯物を干そうとはしないのではないでしょうか。
つまり、ベランダは設置に高額な施工費がかかる反面、住む人の意思に関係なくおよそ1/3の確率で使えないというリスクがある設備と言い換えることができます。
* 気象庁「過去の気象データ検索」より 観測地点:東京都世田谷区、カウント対象:降雨記録が0.0mmでない日 2021年…120日、2022年…123日、2023年…91日
花粉による影響
花粉による影響も見過ごせません。
スギやヒノキ花粉は一般には、2月~5月の飛散量がもっとも多く前後の1月、6月にも症状が現れる人も少なくありません。この期間に洗濯物を外干しすると衣類に花粉が付着してしまうので、それを嫌って部屋干しする人が大半だと思います。花粉症の方にとって春から初夏にかけてのベランダ環境は劣悪と言っていいでしょう。
さらに1月ごろから5月ごろまで花粉を避ける場合、半年近く洗濯物を外で干さないことになります。
コスト面
日本は頻繁に雨が降る地域ですから、防水対策は家を守るという意味において重要です。しかしながらベランダというのは濡れることを前提に作っています。住宅によっては屋根の役割もかねています。
防水の役割を担うということは当然施工に費用がかかります。また、屋根の役割も担うのであれば断熱効果も通常の屋根と同等レベルを求めたくなります。ベランダ部分の断熱レベルが通常壁と同等だとしたら、ベランダが断熱構造の抜け穴になってしまうからです。
ベランダはコストがかかる設備です。家によって費用観は大きく異なるのは当たり前ですが百万円単位のコストがかかっていてもなんら不思議ではありません。
ベランダに長居をする、という人をあまり聞いたことがありません。基本的にベランダで過ごす時間は①洗濯物を干す②洗濯物を取り込む③その他趣味の場所(植物・ぼーっと外を眺める)くらいではないでょうか。せいぜい一日平均10分程度使うくらいだと思われます。1日10分しか使わない(雨の日は0分)設備として見るとベランダは贅沢な場所です。
景観面
輸入住宅を紹介するブログとして最も強調したいのは、ベランダは景観の邪魔になる場合が多いということです。
決してすべてのベランダを否定するわけではありません。
しかし、他人の洗濯物が干されていてる景色を見て心地よく感じる人はごく僅かではないでしょうか。(一部の趣味の人を除く)仮にそうだとすれば、なぜそう思いながらも外で洗濯物を干すのが当たり前なのでしょうか?これは非常に興味深い疑問です。
加えて、ベランダという構造物自体が日本の住宅でよく見られるある種固有の景観を作りだしています。ベランダが輸入住宅の外観を決定的に日本風にする要素だとも思っています。なぜなら日本のベランダは独自の景観を持っているからです。これは日常では案外気づけない点です。
お手本とする欧米の家には当然日本風のベランダはないし物干し竿はぶら下がっていないからです。洗濯物を外に干すことを法的に禁止している国すらあります。
輸入住宅にベランダを設置するのあれば、輸入住宅らしさをできるだけ活かすように、道路面側には設置しないようにしたり、形状に工夫をして日本風に見えるのを避けたいところです。
ベランダなしで洗濯物をどうやって干すか
ベランダが当たり前だと思う人ほど、ベランダがない環境でどうやって洗濯物を干せばよいか心配になるかもしれません。
答えは単純で、乾燥機か部屋干しです。
その1.乾燥機
乾燥機については現在では洗濯から脱水、乾燥まで一台でこなしてくれるヒートポンプ式洗濯機があります。乾燥による電気代は1回あたり28円程度のようです。(参考:ドコモでんき)
仮に初期導入コストを15万円、1回あたりのランニングコストを30円で想定すると、初年の費用は約16万1千円となります。5年に一度壊れて買い換えたとすると、30年後の想定コストはおよそ120万となります。(物価上昇や電気料金の変動は加味していません)
このくらいの年月でようやくベランダ設置費用と肩を並べるくらいの費用観です。(いや、ベランダ設置費用の方が高い可能性が高い)
しかし、見逃してはいけないのは、
洗濯機から洗濯物を取り出して、物干し竿に吊るし、乾いたら取り込むという一連の家事にかかる手間と時間が一切発生しないことです。しかも天気にお構いなく行えるというメリットを享受できることです。ここまでのメリットがありながら乾燥機は「縮みやすいから」という理由で導入を検討しないのはもったいないと個人的には思います。
その2.部屋干し
輸入住宅は気密性が高い場合が多く(良いこと)、暖房をつけると秋冬の季節は特に乾燥がひどいというデメリットがあります。(ちなみに、冬に我が家で加湿器をつけない場合、最低湿度が20%を切ります。)
これを解消する助けになるのが部屋干しです。冬場であれば加湿器替わりになるのである意味一石二鳥です。これを見越して施工時には、部屋干し用の竿を吊るしておける吊り輪などの設備をつけておくのがおすすめです。
まとめ
いかがでしたでしょうか。ベランダは日本で普段生活しているとあって当たり前の設備だったと思います。しかしながら、生活様式が変化している現代において必ずしも必要ではないかもしれません。
不要だけならまだしも、設置しているだけで日々コストがかかるものでもあります。設置コストに加えランニングコストが発生していなければ、浮いたお金で普段のお買い物でちょっとした贅沢ができたり、趣味につかったり、旅行にすら行けてしまう金額になるのではないでしょうか。
ちなみに我が家にベランダは設置しませんでした。知り合いと家の話になって、我が家にはベランダがない。と言うと大概驚かれるのですが実際ベランダがない生活を送って5年経過している今、妻も私も困っていることは特にありません。
それでもやっぱり外がいい!天日干しした後に衣類からするお日様の匂いがいい!という方でも是非検討する価値はあると思います。
私個人としては、ベランダが無くて困ったことが一度もないので本当におすすめです。
人生二度なし。賢く判断してよりよい輸入住宅ライフをお過ごしください。