輸入住宅を建てようとしている方は家がどんな外観の住宅になるのかとても気になるのではないでしょうか。おしゃれでデザイン性のある外観は輸入住宅を建てるのであればぜひとも叶えたいことの一つです。
外壁や屋根のことなら十分考えているよ、という方も屋根勾配についてはいかがでしょうか?外壁をどんな素材や色にするか、屋根材はどんな素材でどんな色を選ぶか決めることは重要です。ですが屋根勾配についてじっくりと考えたことのある人は案外少ないかもしれません。
しかし事実として、屋根勾配は外観の決め手になりうります。
屋根勾配はデザイン性だけで決めるものではありません。しかし、デザイン性を重視するのが輸入住宅でもあります。適切な屋根勾配を選べるよう考えるべきポイントを見ていきましょう。
目次
屋根勾配とは?
屋根勾配とは屋根を作るときの屋根の傾斜角度のことを言います。屋根の角度が水平に近いほど緩勾配、垂直に近いほど急勾配と呼ばれます。
日本ではおおよそ3寸勾配以下の屋根を緩勾配、3~6寸勾配を並勾配、6寸勾配を超えると急勾配と呼びます。
「〇寸」というのは屋根の水平方向に対して10進んだ際に、高さがいくつ変わるのかを示した言葉です。例えば屋根の水平方向が10に対して高さが5変わる屋根を「5寸勾配の屋根」と表現します。
「寸」は長さを表す尺貫法の単位で、単位としては現代では一般的ではありませんが建築業界では定着している単位です。屋根勾配とはの屋根の傾斜の強さを表す言葉ですから、角度で表現したくなりますが一般的に角度で屋根の勾配を表現する機会は少ないです。
ちなみに3寸勾配であれば角度は16.7°、4寸勾配は21.8°、5寸勾配は26.6°、6寸勾配は31°、8寸勾配は38.7°、10寸勾配は45°となります。
西洋建築の屋根は基本的に急勾配
輸入住宅のお手本とする西洋建築の屋根は基本的に急勾配です。欧米の住宅の写真をよくよく観察してみてください。ほとんどの屋根は急勾配(6寸勾配・約31.8° 以上)であることに気づきます。(10寸勾配・45° 以上の屋根も珍しくありません)
屋根材に使われる瓦やスレート、シングルは外壁と違う素材で葺かれることが普通です。つまり屋根と外壁は違う素材感、違い色合いになる場合がほとんどということになります。
日本の建築は柱で家を建てますが、西洋建築は「壁」で家を建てます。そして西洋建築の壁には存在感が強くあります。
一方、急勾配の屋根は緩勾配の屋根と比べ存在感があり建物をより立派に見せます。ですから同じく存在感の強い外壁とバランスが取れるのです。
急勾配の屋根が存在感を高める例としては、教会の尖塔が挙げられます。もはや〇寸勾配という枠を超えるような急角度の屋根がつけれらています。他の例としては、日本の神社仏閣も同様です。あまり意識してみることは少ないかもしれませんが、神社仏閣の屋根は一般的な家屋に比べかなり急勾配の屋根がつけられていて、瓦屋根特有のどっしりとした存在感もあります。
日本の住宅の屋根勾配
日常生活で屋根の勾配を気にすることは少ないと思いますが、改めて日本の住宅の屋根勾配を見ると4寸勾配~6寸勾配が一般的なようです。
日本は世界的に見ても雨の多い国です。
世界でも多雨地帯であるモンスーンアジアの東端に位置する日本は、年平均1718mmの降水量があり、これは世界平均(880mm)の約2倍に相当する
国土交通省「水害対策を考える」
雨漏りのリスクを低減するためにはある程度の勾配が必要です。勾配があるほど雨が流れやすく屋根に留まりにくくなるためです。
また、雪国では急勾配の屋根の家を見かけることがあります。
日本には世界的に見ても特に雪の降る量がすさまじい豪雪地帯があります。そのような豪雪地帯では雪の重みで屋根が潰されないよう屋根から雪が滑り落ちて積もらない急勾配の屋根の家があります。
しかし一見豪雪対策になりそうな急勾配屋根は、屋根に積もらない代わりに家の周囲に屋根を積もらせるため、広い敷地が必要になるデメリットがあります。このような事情から雪国の屋根は必ずしも急勾配ではありません。
南はどうでしょうか。例えば沖縄は台風がよく通ることで知られていますが沖縄の屋根は緩勾配の屋根が多くあります。台風がよく通るということは雨もよく降りますので急勾配が良いのでは、と考えるかもしれません。
しかし、強風に対して備えるのであれば急勾配より風の影響を受けにくい緩勾配屋根の方が家が壊にくい、という意味において優れています。
また沖縄は家がコンクリート造りでどっしりとしている家が多く(これも台風対策)、木造ではありませんから雨漏りに対するリスクが多少軽減されることも影響して緩勾配屋根が主流となっています。
よって実際目にする通り、日本の住宅の屋根は4寸勾配程度あればほとんどの地域で事足りるということになります。勾配を高めるとコストがかかりますから機能的に目的を達しているのに必要以上に勾配は取らないというのが現状でしょう。
そんな日本において急勾配屋根が使われるのは主に神社仏閣や城です。神社仏閣、特に城はかなり他急勾配屋根です。
こういった建物に急勾配屋根が採用される理由はやはりデザイン性でしょう。
急勾配屋根はそれだけ外観に与えるインパクトがあるということです。デザイン性に重点を置く輸入住宅とのな共通点でもありますね。
急勾配の屋根のメリット
メリット①外観が向上する
急勾配屋根にする最大のメリットは外観が向上することです。抽象的な表現ですが、家が立派に見えるようになります。理由は屋根という重量感ある存在がより際立って認識されるからです。重量感ある屋根とそれを支える壁というビジュアルが家を立派に見せるのです。
また、屋根勾配が高まるほど頂点の三角形は鋭角になります。よりシャープになることでビジュアル的にもかっこよい印象になっていきます。
メリット②水はけが良くなり雨漏りのリスクが低減する
角度があるため雨水が留まりにくく素早く流れれるため雨漏りのリスクが低減します。日本の住環境において湿気は大敵です。屋根の雨漏りをきっかけに家の構造が瓦解することさえあります。
また、水がたまらないのでコケが発生するのを防ぐこともできます。たまに、緩勾配屋根の北側にある屋根のお宅で、おそらく日照環境が悪く一日中太陽の日が当たらないのでしょう…そういった部分にコケが生えている場面を見かけることがあります。コケが生えているからどう、ということはありませんがやはり不衛生な印象に繋がりますよね。
こういった環境に建てるのであれば、積極的に勾配を高くするべきでしょう。
メリット③屋根裏スペースが活用できる
急勾配屋根のメリットのひとつは屋根裏のスペースが広いことです。このスペースは物置に使ったり、秘密基地のようなちょっとした小部屋にしたり、下のフロアと繋げて吹き抜けにしたりと活用の幅が結構あります。
また全館空調を取り入れるのであれば屋根裏に空調システムを格納して屋根裏スペースをうまく活用できるでしょう。
また、屋根裏が広いということは断熱効果が高いことも意味します。
夏の暑い日差しを想像してください。燃えるような熱い日差しを浴びた屋根は、ものすごい高温になり屋根を温めます。その屋根が屋根裏のスペースに伝わり室内を温めますが、屋根勾配がある、つまり屋根裏が広いと、室内に熱が伝わる前の「バッファ」を広くもっているため断熱性能が向上するのです。
メリット④ドーマーが似合う
ドーマー(dormer)とは屋根から飛び出した窓のついた小屋根のことです。西洋建築で良くみられ、採光や換気の目的で設置されます。
ドーマーが屋根につくとより西洋建築らしい雰囲気がでます。
しかし、このドーマーを緩勾配に取り付けるとドーマー部分が奥行方向に長くなりトンネルのような見た目になってしまうため、はっきり言って不格好なデザインになってしまいます。
どころが急勾配屋根ではトンネルのようにはなりませんので整った印象になります。ドーマーが似合うのは急勾配屋根だけのメリットです。
急勾配の屋根のデメリット
デメリット①コストが上がる
急勾配屋根の最大のデメリットは、コストがかかることでしょう。
緩勾配に比べ、施工面積が増えるのでシンプルに材料のコストが上昇します。また、6寸勾配を超えると足場を組む必要が発生しますので緩勾配ではかからなかったコストが必要になります。
6寸勾配の角度は31°です。31°と聞くとそれほど角度がきつくないように聞こえるかもしれませんが、実際に6寸勾配の屋根の上に立つと想像以上に屹立した感覚を覚えます。人が作業を普通にできるギリギリの角度でしょう。ということで、6寸勾配を超える屋根を作る場合は足場を設けることになります。
足場も緩勾配屋根では不要なコストですので、材料とのダブルパンチが効いてきます。急勾配屋根をためらってしまう最大のハードルはこのコストと言っても過言ではありません。
デメリット②強風や突風の影響を受けやすい
急勾配屋根のデメリット2つ目は強風や突風を受けやすいことです。急勾配は緩勾配と比べより垂直に近い形状をしていますし、緩勾配より表面積が増えることも影響して風の影響を受けやすくなります。
よって、風の強い地域、特に台風の通り道のエリアでは緩勾配が無難でしょう。
私はそれ以外の地域では検討の上急勾配にしても良いと考えています。もし急勾配屋根を風の影響を受けやすいという理由で諦めるのなら、そもそも家の外壁についてはどうなんだと考えます。家の外壁こそ直角に立って家で最も強く風の影響を受ける部分です。壁がある以上屋根を急勾配にしようが緩勾配にしようが風の影響は避けられないものだと考えますので無碍に風を恐れて急勾配を避けるのは、後悔してほしくない意味からおススメしません。
急勾配の屋根がおすすめできない場合
それでも急勾配屋根をおススメしない場合が2つあります。
- 風が強いエリアに家を建てる場合
- 遠方から家を見ることができない場合
順番に見ていきましょう。
まず風が強いエリアに家を建てるのはおすすめできない、というケースですが、ここでいう風の強いエリアとは台風の通り道になるエリアに建てようとしている場合です。
台風の通り道はだいたい決まっており、日本の南~南西にかけてのエリアです。具体的には鹿児島県、高知県、和歌山県でこの3件だけでも台風が上陸する数の半数近くを占めると言われています。どの県も広いですからこの県のすべてが台風の通り道という訳ではありませんが、他県とくらべても高確率で台風の被害にあいやすいでしょう。
私は上記3県に住んでいても、輸入住宅を建てるのであればそれでも急勾配のデザインを取り入れるタイプですが、やはり被害に遭ってからでは遅いというのはその通りです。万人にはおススメできません。
急勾配屋根をおススメできない2つ目の場合は、遠方から家を見ることができない、です。
急勾配屋根のメリットはこれまでご紹介してきましたが、最大のメリットはオシャレな外観になることです。しかしながら、急勾配屋根の角度を実感するためには家をある程度離れた位置から見ないといけません。
下から見上げるだけでは4寸勾配の屋根も、10寸勾配の屋根も屋根の全体像が見渡せない以上ビジュアル的な違いはありません。そこで遠方から離れて自宅を確認する訳ですが、位置からも自宅を遠方で見ることができないといった場合はあると思います。
こういった環境では急勾配屋根にしたところで最大のメリットである外観の向上は意味を感じざるを得ません。とは言え、将来的には視界を阻んでいる建物が取り壊され、遠方から見える機会があるかもしれませんが…
まとめ
せっかくの輸入住宅を建てるのであれば、急勾配屋根をおススメします。
急勾配屋根とは日本では「6寸勾配」以上を指す屋根の勾配(角度)を持つ屋根のことで日本では比較的少ない勾配です。角度で言えば31°にあたるため急勾配ということばしっくりこない人もいるかもしれません。しかし、実際に6寸勾配の屋根の上に立つとかなりキツい角度であることを体感するはずです。直立して立ってはいられないでしょう。6寸勾配とはそういう角度です。
ではなぜ、そうった急勾配をおススメするかというとそれは何よりもデザイン性・外観が向上する、おしゃれになるからに他なりません。
急勾配にすると屋根の面積が実際に広くなり、重量感を感じる屋根に存在感が高まります。さらに鋭角に近い屋根の角度はやはりシャープさが増してかっこいいです。
このような理由からデザイン性・外観を求める輸入住宅では急勾配をぜひおすすめします。
ただし、急勾配を避けるべき場合もあります。
それは風がとても強い地域(台風の通り道)に家を建てる場合と、遠方から自宅の屋根を見渡すことが物理的にできない場合です。後者はいくらデザイン性・外観を向上しようともそれを目で確認できない分には意味がないですからね…
急勾配はハッキリ言ってコストがかかります。もしここ以外にコストをかけるべきところがあるなら優先するべき箇所ではないかもしれません。
ですが、私が一貫してお伝えしているのは輸入住宅は外観から決めるべきという考え方です。屋根はその中で外見の決め手になる箇所です。もちろん急勾配屋根はデザイン上のメリットだけではありません。屋根裏スペースの活用や断熱効果の向上も期待できます。ですから是非急勾配屋根をご検討ください。
人生二度なし。良い輸入住宅ライフ!!