Georgian house TOKYO
モノにこだわる元百貨店バイヤーが輸入住宅を建てた
プロポーション

【徹底解説】輸入住宅のメリット・デメリット

将来輸入住宅に住みたいと思っている人も、すでに輸入住宅を建てることを検討し始めている方も、実際に住んでみたらどんなメリットデメリットがあるのかワクワクと不安な気持ちを抱いていると思います。

ほとんどの人にとって家を建てることは、一生に一度あるかないかの大イベント

輸入住宅が住み慣れた一般的な日本の住宅とどう違うかは住まいを決める重大な決定要因だと思います。そこで今回は日本の一般的な戸建て・アパートに住んだことがある筆者が、輸入住宅に住んで5年経った今感じる輸入住宅のメリット・デメリットをご紹介します

輸入住宅とは?

「輸入住宅」とはどんな住宅を指すのか確認しましょう。

輸入住宅についての明確な定義はない一方、一般的には輸入住宅とは、海外の設計思想で資材を輸入、または国内調達して国内に建てた住宅のことと解釈されているようです。

つまり海外で設計されたものを日本で再現する、ということです。

輸入住宅のメリット3選

1.流行に左右されないデザイン

まず何と言ってもデザインの違いが挙げられます。デザインについて、日本の一般的な住宅と明らかに違いを感じるのは流行に左右されないデザインであること、です。

欧米、特にヨーロッパの長い歴史の中で培われてきた、普遍的な美しさが魅力です。

美しさの背景には数学的に裏打ちされたプロポーションへのこだわりがあります。例えば「黄金比」に代表されるようなモノとモノの比率。

引用元:THISisCarpentry

建物の天井高、柱の高さ、腰壁の高さ、クラウンモールディングの大きさ、屋根の形や勾配など、どれも最も良いプロポーションを数学的に求めるため、一時の流行に左右されない普遍的な美しさを秘めています。

プロポショーンについてはこちらの記事で解説していますので、参考にどうぞ!

【施主必見】輸入住宅好きが知っておきたいプロポーションの知識

日本の住宅街を歩いているときに注意深く家の外観を観察していると、なんとなく築年数がわかったりしませんか?

…これは昭和に建てらたものに違いない…こっちは平成に入ってから建てられたものだろうな…あの家はかなり最近に建てられたはずだ…。

外装や外構に真新しい印象を受けるかどうかが最もわかりやすいですが、そうでなくともデザインから判断することも可能です。なぜかというと日本の住宅デザインには流行があるからです。

それはシンプル・モダンと言われている住宅も例外ではありません

シンプルでモダンな建物は無駄な装飾を省いたユニバーサルな普遍性がありますが、日本の住宅においてはこれすらも一つの流行だと考えます。なぜなら日本の住宅業界はスクラップ&ビルドで成り立っているからです。必ず次の流行が起きます

新しいもの好きの日本人は流行遅れを感じた父母から受けついだ家を取り壊し、次の流行りの家を建てる。その息子・娘たちもまた受け継いだ家を取り壊し…(つづく)…そういった大きな流れの中に私たち一般市民のマイホームドリームは吸い込まれていくのです(笑…)

一方輸入住宅はどうでしょうか。

前述のとおり設計思想にプロポーションという普遍性があるのです。人類が存在している限り、黄金比は何百年経ってもモノとモノの美しい対比であり続けるでしょう。プロポーションの考えを取り入れた家のデザインは時代を超える価値を提供してくれるのです。

輸入住宅は決して人気ナンバーワンになる住宅ではありません。それでも、流行に左右されない良さをそれが分かる人の元で、いつまでも普遍的デザイン価値を発揮してくれるでしょう。

2.おしゃれな外観

輸入住宅の一番の特徴はそのおしゃれな外観です。

おしゃれに感じるかどうかは人それぞれでしょ?というツッコミが入りそうですが、巷の声を聞く限りでは「おしゃれ」と形容されることが多いです。

そもそも、おしゃれとは何なのでしょうか?(深い)

私は、おしゃれとは「スタイル(様式)」を持っていることだと思っています。

スタイルはある程度定型化されたパターンやルールとも言い換えられます。

では本題に戻り、なぜ輸入住宅は「おしゃれ」だと感じるのでしょうか?

筆者個人としては、輸入住宅がおしゃれに感じるのは日本の住宅があまりにダサいため比べるとおしゃれに見える、のだと考えています。

日本には素晴らしい伝統を受け継いだ建物が多く存在していました。それがライフスタイルの変化で間取りが変わり、製造技術の進歩で様々な資材が取り込まれていきました。その結果、古来家がもっていた景観美を捨て去り、スタイルを伴わないコスパ重視の住宅が量産される結果になっています。

家を建てるとき、家の中と外のどちらから考え始めますか?

多くの人は「中」から考え始めるはずです。どんな間取りにしよう?どこにリビングを配置しよう?導線は?トイレは1階と2階のどちらにも欲しい…などなど。考える視点が常に家の中にあるのです。

「中」から決めていった結果論として出来上がるのが「外」、いわゆる外観という恰好です。ではこの順番で決めていくと外観はどう見えるのでしょうか?例えばについて考えてみましょう。

結論、形・大きさ・位置がバラバラに配置された家が出来上がります。これは日本の至る場所で見かける典型的な戸建ての外観です。窓の形や大きさ、位置は間取りの都合によって決まりますから外からどう見えるかは考慮したとしても後追いです。

では、この外観はおしゃれに見えるでしょうか?

はっきり言って、おしゃれではないでしょう。なぜなら、戸建ての外観として上下にも左右にもアシンメトリーな窓配置をデザインとして美しく見せるのは相当難易度が高いからです。ましてや、窓の配置に強い意志が入っている訳でもありませんから当然の結果です。

私は、輸入住宅でなくとも日本の住宅は建てる際に「外」から決めていくと、景観的な美しさはかなり改善されると考えています。日本の家は外からどう見えるかより、間取り設計に重点が置かれ過ぎです。そしてあまりにコスパ重視です。

一方欧米の住宅は外観を重視します。詳しい説明は割愛しますが、歴史的に建物が石造りやレンガ造りだったことが影響しています。石造りやレンガ造り、いわゆる組積造では、まず外壁を構築して屋根を作り、次に中を作る順番になります。

組積造では開口部にあたる窓の位置を垂直方向に揃えることが強度的なメリットになりますから、こうした造り方の必然性も外観デザインがシンメトリーになることに作用しています。

3.断熱性・気密性が高い

ほとんどの輸入住宅は、2×4工法や木質パネル工法に代表される面構造で作られます。これらの工法では、合板を張って壁(パネル)をつくります。このようにしてできた壁(パネル)を、床・壁・天井として接合して家をつくり上げていきます。

床・壁・天井の面は一体化されて、ちょうど箱のような状態になるため、気密性が高くなります。気密性が高まることで外気温の影響を受けにくく、室内の空気も外に漏れにくくなるのです。

室内から熱が最も逃げやすい部分は一般的に窓です。

しかし、輸入住宅の窓には二重ガラス構造、もしくは三重ガラス構造の窓が採用されることが多く、あえてシングル構造を選ばななければ断熱性能を一層高めることが期待できます。さらに窓を構成する素材には木材や合成樹脂が使われることが多いです。

一般的な日本の住宅ではアルミサッシが使われますが、アルミは断熱性能が著しく悪く、せっかく温めたり、冷やしたりした室内の温度はこの熱交換率の高いアルミサッシを通じて外に排出されてしまいます。

一方、輸入住宅ではより熱交換率の低い木材や合成樹脂が使われており比較的外気を遮断し、室内の温度をキープしてくれます。

私は全窓が二重ガラス・木材サッシの輸入住宅に住んで5年になりますが、冬の時期に結露を見る機会は年に3、4日程度です。結露が出ると驚くくらいです。そんなときは大抵、夜から朝方にかけて急速に気温が下がった時に発生していて、室内外の気温差が大きくなった場合に限ります。こんな時は「さすがに結露したか…」と思いますが、普通の寒さや温度変化では結露が発生することはありません。

これはマンションやアパート、実家の戸建てでは体験したことのないくらい少ない頻度です。特にアパートに住んでいた頃は冬になれば毎朝結露していましたし、鍋を使って料理しようとすれば、すぐに室内の湿度が上がって窓が結露していましたね…。(いつもカビだらけでした)

壁も窓もしっかりと断熱された輸入住宅の構造は、さながら水筒に使われている「魔法瓶」のようなイメージです。輸入住宅が開放的な間取りと言われながらも断熱性能が高いのは工法と窓単体の性能のおかげです。

番外編:QOLが爆上がる

これは主観の入った意見ですが、輸入住宅に住むとQOLが爆上がりします。

QOLとはQuality OF Lifeのことで、生活の質や生きがい、生活満足度などと訳されます。

要するに憧れの輸入住宅に住むということだけで生活の質が格段に向上していることを実感できます。言い換えれば「自分は良い暮らしをしている」という幸福感を実感しやすくなります

生活することを「衣・食・住」と表現します。

「衣」とは、着るもの、「食」は食べること、「住」はリビングのことで、人はおおよそこの順番で物事を満たそうとするようです。

若いころを思い出してください。ファッションに目覚め自分を表現する道具として、自分のアイデンティティとして服やバッグ、アクセサリーなどファッションにこだわりませんでしたか?

その時期を経験すると、次に興味の対象は「食」です。親元を離れたり、他人と食事をする機会が増えていくなかで世の中には様々な「食」のバリエーションがあることを知り、その奥深さを知っていきます。

そして最後に住です。この領域は自己や家族との共有空間で、たまの来客があっても基本的にはそこにいる人達のみで共有される空間です。

個人的な主観にすぎませんが、一生涯かけてもこの「住」へのこだわりに到達しない人は相当数いると思います。また住へのこだわりよりも「衣」や「食」重視の人も数多くいるでしょう。

ですから、この記事を読んでいる「住」にこだわりを持つあなたは様々な価値観を知ったうえでさらなる好奇心を持った少数派の人です。

人は環境で変わるものだと思います。ですから、人生の大半を過ごす家を豊かな空間にすることは、人生を豊かにすることに他ならりません。

豊かな空間の定義はひとそれぞれでしょう。しかし、一般に輸入住宅はおしゃれで憧れの住まいと形容されることあるように、多くの人にとって豊かな空間になり得ます。

輸入住宅はプロポーション設計に裏打ちされた「美」があらゆるところに配置されて います。このような美の空間に毎日住むことができれば生活の質が上がることは間違いありません。例えていえば、毎日海外の旅行先のホテルにいるような雰囲気を感じていられるのです。

参考:【施主必見】輸入住宅好きが知っておきたいプロポーションの知識

輸入住宅のデメリット3選

1.目立つ

デメリットの一つは「目立つ」ことです。これはメリットでもありデメリットでもあります。

私の住む町の周辺環境はごく一般的な戸建てが多い場所で、そんな中にたたずむ我が輸入住宅は客観的に見ても目立ってます。家を建てて1年経たないうちは道行く人の多くが我が家をもの珍しがって良く見ていました。

我が家はジョージアンスタイルの家なのですが、家の軒下にあるデンティルモールディング、南向きにも関わらずベランダのない垂直方向にフラットな外壁、そしてなにより玄関のイオニア式オーダー(柱)…やはり客観的に見てご近所さんから浮いています(笑)。

道行くご自身たちは気づいていないようだけど、家の中にまで「外国の家みたーい!」とか「お城みたいだね~」のような、感想の声が漏れ聞こえてくることもあって正直恥ずかしいです。(幸いほめてくれるタイプの感想がほとんど良かった)

一方目立つということは良いことでもあります。他の家にはない存在感を放っているからこそ目立つのです。それが勘違いな悪目立ちする存在感でないのなら自信をもって近所の方の視線を受け入れましょう。

2.メンテナンスに手間がかかる

メンテナンスがしにくいのは誰にとってもデメリットです。

まずは日々のお掃除です。輸入住宅はモールディングや凝った作りの立体的な部分にホコリがたまりがち。キレイ好きの方はストレスを溜めない程度に一段とお掃除に力を入れる必要があるかもしれません。

次に、家の部品が壊れてしまったことを想定しましょう。

例えば、輸入住宅に使われるドアノブは国内のどんなホームセンターに行ってもみあたらなさそうなデザインばかりです。(おしゃれではあります!)

窓ガラスなんて絶対に国内では代替品なんてないでしょ、という作りをしています。輸入住宅では当たり前のダブルハングの窓自体国内ではレアですからね…。もしこれが壊れたら大変だと思うと同時に、大事に扱っていこうという思いにもなります。

素材にこだわると維持が大変というケースもあります。

例えばフローリングは素材にこだわった無垢のフローリングに憧れている人も少なくないでしょう。無垢のフローリングはぬくもりがあって、一枚一枚が違った表情があって長く愛せる素材です。

一方、ローメンテナンスな防水性があるフェイクウッドのフローリングと比べると防水性に劣り汚れやすく断然お手入れに手間がかかります。

また、せっかくの無垢フローリングですから塗装にもこだわりたいところです。無垢材の雰囲気を存分に活かそうと塗装方法をオイル塗装やラッカー塗装を選ぶと、国内で一般的なウレタン塗装と比べてどうしても汚れが目立ちやすいです。

こだわった分見た目は愛着の持てるものに仕上がりますが、そこはメンテナンス性とトレードオフになるのは心得ておきましょう。

3.インテリアを選ぶ

家にはその家にあった家具があります

ヨーロッパのクラシカル家具やアンティーク家具を日本の一般的な住宅やマンション、アパートに納めてもイマイチしっくりこないかもしれません。

同様に輸入住宅の空間にちゃぶ台があったらしっくりこないでしょう。

なぜなら家具が持っている雰囲気が違いすぎて、場違い感が出るためです。

私がごく一般的な日本の戸建て住宅に住んでいた頃、人生で初めてイギリスのアンティーク家具を買いました。家にアンティーク家具がやって来るのを心待ちにして、いざ梱包を開封すると家具が圧倒的存在感を放っていたことを今でも覚えています。

シンプルな床・壁の部屋に置いているだけなのに、なぜこれほど存在感を感じるのか?感覚的に言えば、なぜこれほど浮いているのか?と、自分なりに考えたところ、

家具と家の素材感が全然違うことに気づいたのです。

アンティーク家具はマホガニーの無垢材で作られている一方、家の床はなんだかよくわからない木材の突板でウレタン塗装仕上げ。壁紙は汚れや画びょう跡が目立ちにくいざらざらした表面の安っぽい壁紙。

輸入住宅に和風のちゃぶ台が似合わないことのは当然ですが、シンプルな空間であっても素材のレベル感まで揃えないと不協和音が発生するということを、この時発見しました。

なんだかアンティーク家具が「クラスで浮いている帰国子女の転校生」のように見えてきて申し訳ないところに連れてきたな…と感じました。

つまり家にふさわしい家具というものが存在するのです

輸入住宅の場合は部屋そのものの主張が強いですから、家具もそれなりの主張がないと沈んでしまいます。これは夢の輸入住宅区間をつくる楽しさを併せ持った、審美眼とお財布事情を試されるデメリットでもあるのです…。

まとめ

輸入住宅を建てる人は決して多くないため、実際に建ててみたらどうなるのか不安な人もいると思います。

私は輸入住宅に住んで5年になりますが心配していたデメリットは確かにありました。でも本当にQOLが上がりました。ですから輸入住宅への憧れがある人には絶対に叶えて欲しいと考えています。

輸入住宅は確かに一般的な日本の住宅よりコストがかかることは否めません。

でも、大切なのは高いグレードの素材やオプションをつけることより正しい知識、特に適切なサイズを選ぶためのプロポーションについての知識や、中途半端で粗悪なデザインと良質なデザインを見極める知識を知っているかどうかです。(輸入品であっても粗悪なデザインがあります)

輸入住宅を見続けていると、プロポーションの考えなしに素材がハイクラスなものをチグハグに取り付けた輸入住宅がたくさん存在していることに気づきます。例えていえば全身ハイブランドの服やバッグだけれども全体的なコーディネートが最悪、みたいな状態です。(こういう人、たまにいませんか?)

当然良い素材をつかった輸入住宅の方がより華やかに、豪華に見えるに違いありませんが、繰り返し言うように大切なのは家と部屋に見合った適切なサイズ選びができることと、良質なデザインを見極められることです。(ホームメーカー頼みではいけません!)

こうして出来上がった家は何世代も受け継ぎたくなるような普遍的な魅力を備えているに違いありません。そうした家が1件でも多く日本に建つことを応援しています。

人生二度なし。よい輸入住宅ライフを!

ABOUT ME
こだわりボーズ
学生時代に初めて訪れた海外「イギリス」で見た本場の西洋建築に衝撃を受ける。 夢叶って2019年にジョージアンスタイルの輸入住宅を建築。 輸入住宅づくりの成功と失敗の学びから、満足度の高い輸入住宅ライフに貢献できるよう執筆中。バイヤーの目利きを活かした「こだわりの一品」もご紹介。 2子の父。坊主頭。趣味:芝刈り、写真